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【山口県漁業協同組合 矢玉支店】 漁師 中村正(まさじ)さん、中村芳恵さん、中村順さん

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【山口県漁業協同組合 矢玉支店】 漁師 中村正(まさじ)さん、中村芳恵さん、中村順さん

秋らしくなってきた10月の早朝、日が昇る直前の特牛港に続々と船が帰ってきます。その中に真新しい船の「勝豊丸」がありました。全長18mの勝豊丸が港に着くと、すぐに荷下ろしが始まります。

漁師歴40年以上の中村正さんは、漁師になってずっと乗ってきた船が古くなり、最近、船を新しくしたばかりです。ピカピカの勝豊丸では、中村さんたちが慌ただしく作業をしています。フォークリフトが船のすぐそばにパレットを持ってきました。妻の芳恵さんは、船から下りるとすぐにパレットの上に魚を入れる箱を並べ、正さんといとこの中村順さんが船の魚倉の蓋を開けて、獲ってきた魚を長い柄のついた網ですくっては、大きなザルに入れていきます。

そのザルで船から降ろされた魚は、カタクチイワシ。大人の人差し指くらいの大きさのカタクチイワシがたくさん出てきます。パレットの上の箱は、すぐいっぱいになり、次から次へと積み上がっていきます。
「大漁ですね!」と声をかけると、中村さんは「いやぁ全然よ。獲れるときは、船が沈むかと思うくらい獲れるけぇね。」と、大きな声で答えてくれました。

中村さんは、秋に「棒受網漁」を行なっています。棒受網漁は、網を付けた棒を船の側面から海の中に張り出しておいて、その網の上で集魚灯を照らし、魚をおびき寄せ網を引き上げて、すくい獲るという漁で、光に集まる習性があるイワシやサンマ、アジ、サバが獲れます。

特牛港に帰港する「勝豊丸」

中村さんが漁場にしているのは、特牛港を出て5分程度のところから、油谷湾のあたりまでの海域です。深夜1時頃に出航して、日が昇る頃には漁を終えて港に戻ってきます。

大きいものは、手のひらサイズのウルメイワシ、小さいものはカタクチイワシなど、狙う魚によって目合いの大きさが違う網を使い分けるそうです。船首に積み上げられている茶色い網を中村さんが指差しながら「今日、使ったのはこのくらいの網目やけど、シラスなんかのときはもっと目が細かいんよ。1回使ったら結構ゴミとか付くけぇ、ちゃんと掃除せんといけん。網の掃除が鮮度のよさにもつながるけぇね。清潔第一。」と教えてくれました。ゴミが絡まっていたり、獲った魚が残っていて腐ったりすると、次に獲る魚の品質に影響するのです。

特牛地区の棒受網の漁師さんは、漁場が近いことで鮮度のよい魚を素早く水揚げできる上、獲ってきた魚の鮮度を高く保つための努力も欠かしません。

それは、荷受けする特牛市場の職員さんも同じで、セリ場や荷揚げする場所は、常にきれいにしています。魚が揚がってくる前から職員さんがホースでしっかり水を流していて、漁師さんと市場が一丸となって「よい商品を出す」という気合いを感じました。

船のそばに積み上がったセリ用の箱のそばに、いろんな人たちがやってきては、魚をまじまじと見ています。「今日はどうね?」と中村さんに話しかける人もいます。みなさん魚を買い付けに来た人のようです。「さっきのは、水産加工会社の社長さん。今日、獲ってきたカタクチイワシは、地元の工場で田作りになるんよ。お正月に食べるやろ?キビナゴとよう似とるけど、キビナゴは身がかたいけぇ、カタクチイワシの方が高く買ってもらえるんよ。ちょっと大きいのは、いりこになるし、ウルメイワシはめざしになるよ。シラスは、ちりめんじゃことかね。」

漁港で荷揚げ作業をする漁師のみなさん

中村さんのお話を聞くうちに「目の前に揚がった魚は、漁師さんや加工業者さんなど多くの方が関わって、私たちの食卓にのぼるんだな」と改めて実感しました。

さらに、特牛港からは動物たちの食卓にも魚が届けられています。この日、中村さんが獲ってきた魚の中には、たくさんの豆アジがあり、金属製の箱に入れられて水揚げされていました。その豆アジは、水族館や養殖場などに流通し、ペンギンやハマチの餌になるそうです。「人間も動物も、美味しいもんは同じっちゅうことやね。」と話すと中村さんは、わははと笑いました。

みなさんも下関産のいりこや、ちりめんじゃこを買ったら、それはもしかしたら、中村さんの船から揚がったものかも知れません。魚の加工品もぜひ、下関産のものをお買い求めくださいね。

獲った魚をチェックする漁師のみなさん買い付けに来た方がセリ用の箱を見ている写真

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