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山口県漁業協同組合才川支店 運営委員長 今井正さん
今井さんの漁師歴は55年。以前は海苔の養殖もしていたそうですが、今は雑カゴや一本釣りの漁をしています。同じ才川支店に所属する組合員のほとんどが今井さんと同じ一本釣りと雑カゴ漁です。他にも建網漁やカニカゴ、イカカゴ漁が行われています。免許が必要で、1人200個までと決められている雑カゴ漁にはメバルやカサゴ、タコ、カニ、ギギュウなどが入ります。「キジハタは最近滅多に会わん」と今井さんは言います。「幻の魚」とも言われるほど漁獲量は少なく、才川支店では1年間で15匹から20匹程度しか市場に出ていません。今井さんがキジハタに初めて出会ったのは今から40年ほど前。イカカゴに入っていたオレンジ色の斑点がある珍しい魚を初めて食べた時「こんなに美味い魚があるのか!」と衝撃を受けたと言います。それからはキジハタをとることも増えました。漁場は関門海峡の瀬で、生きたエビやアジでキジハタを狙います。「最初の一撃でぐっと潜ろうとするけど、上げる時は浮き袋が膨らむんでじわ〜っと上がってくるんよ」と言う今井さん。釣りが好きなのが伝わってきます。
今井さんが漁師になったばかりの頃は「才川の海は山口県一の漁場」とも言われるほど様々な種類の魚が獲れていたそうです。というのも才川の海には魚が産卵するのに適した藻場が多かったからです。しかしその後の近隣の発展に伴い河川工事なども進んだことで海の様子が変わってしまい、才川で盛んだった海苔の養殖もできなくなってしまいました。それでも才川の漁師さんたちは海の資源を再生させるために岸から100mほどの沖合、水深5mから10mのところに漁礁や牡蠣殻を沈めたり、カサゴやタイ、ヒラメ、車海老やガザミ、アワビなどの稚魚を放流するなど様々な取り組みを行っています。そして「牡蠣を養殖すると海が綺麗になる」と聞いて牡蠣の養殖も始めました。
才川の漁師さんたちはただ釣果を待つだけでなく、昔のようにいろんな種類の魚がとれるよう様々な形で努力しています。最近は20代と30代の若い漁師さんも組合に加わりました。兼業漁師として一本釣りをしながら、これからは遊漁船の運営もする予定に今井さんも期待を寄せています。これから漁礁の設置や稚魚放流などの効果が現れてくると私たち消費者にも才川で上がった美味しい魚介類をいただくチャンスが増えるでしょう。地元の海を眺めるときは、その海の中にどんな景色が広がっているかぜひ想像してみてください。